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Credit: SAKURA internet Inc.
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気候変動と寒冷地で増えるデータセンターの関係

Associate Professor Juha Saunavaara Arctic Research Center, Hokkaido University
ユハ・サウナワーラ
北海道大学 北極域研究センター 准教授
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ユハ・サウナワーラ准教授に聞く、気候変動研究者への15の質問(字幕付き)

北極域とその周辺地域は、自然の寒冷な気候を生かして、近年、データセンター設立の拠点となっています。デジタル化が進む世界において、データセンターの設立は不可欠で、今後も寒冷地域を拠点とする傾向は続くと考えられます。北極域研究センターのユハ・サウナワーラ准教授は、北極域のデータセンターが地域社会にどのように貢献しているか、また、気候変動の脅威に対してどのような準備をしているかについて語りました。

(上部の背景画像はさくらインターネット株式会社提供)

ユハ・サウナワーラ
北海道大学 北極域研究センター 准教授
ユハ・サウナワーラ 北海道大学 北極域研究センター 准教授 

デジタル社会を支えるデータセンター

現代社会は、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の2つの変革を進めています。データセンターはこれらの変革の要で、DXに必要なデジタルインフラや莫大な計算能力を提供する一方で、膨大な電力を消費します。この電力は、化石燃料から再生可能エネルギーまで多岐にわたる方法でまかないます。

石狩再エネデータセンター第1号の模型。(提供: 東急不動産)
石狩再エネデータセンター第1号の模型。(提供: 東急不動産)

パンデミックの時期に特筆されたように、現代社会において仕事や娯楽はインターネットに依存しており、それはデジタルインフラに支えられています。デジタルインフラの要であるデータセンターは、電力の節約に貢献しています。もしデータセンターに集中している計算能力が、無数の使用場所に分散していた場合、全体のエネルギー消費ははるかに多くなってしまうでしょう。

さくらインターネット石狩データセンターでサーバーを点検する様子(提供:さくらインターネット株式会社)
さくらインターネット石狩データセンターでサーバーを点検する様子(提供:さくらインターネット株式会社)

北極域のデータセンターが望まれる理由

データセンターの設備に関して、主に2つの重要な要素があります。それは、電力と冷却、そして海底通信ケーブルネットワークへのアクセスです。

北極域は寒冷な気候で、広大な土地が存在します。この寒冷な気候によって、北極域のデータセンターは冷却が容易です。実際に、全体のエネルギー消費量は約30%から40%削減されます。さらに、北極域は人口がまばらであり、データセンターが重視するセキュリティとプライバシーの点からみても、北極域は魅力的です。

フィンランドのカヤーニにあるレンフォルシン・ランタ・ビジネスパーク。ここには大型スーパーコンピュータ施設(LUMI)が設置されている。(提供:CSC – IT Centre for Science Ltd.)
フィンランドのカヤーニにあるレンフォルシン・ランタ・ビジネスパーク。ここには大型スーパーコンピュータ施設(LUMI)が設置されている。(提供:CSC – IT Centre for Science Ltd.)

データセンター業界の動向

データセンターからは多くの廃熱が発生します。フィンランドのカヤーニに設置された大型のスーパーコンピューター施設(LUMI)は、完全に水力発電によって稼働しており、廃熱はLUMIが設置されているビジネスパークの暖房に利用されます。このため、LUMIは世界で最も環境効率の高いスーパーコンピューターの1つとなっています。

2000年代初頭まで、データセンター業界が世界で生産される電力の最大5%を消費すると予測されていました。しかし、この予測は現実にはなりませんでした。なぜなら、イノベーションと技術的進歩によって、データセンター業界が予想以上にエネルギー効率を向上させることができたからです。

日本の場合、国内のデータセンターの約61%は東京またはその周辺に、さらに24%は大阪に集中しています。この2つの都市のいずれかで大規模な災害が発生した場合、インターネットへのアクセスが事実上途絶える可能性があります。このリスクを認識し、日本政府は、データセンターの分散化を促進する取り組みを進めています。

数値化され、制御された自然

データセンターは設計上、自然環境の影響を受けないように厳密に管理されています。気温や湿度など、自然界の現象や特性が数値化され、管理されています。一方で、データセンターは広大な土地を占有し、多量の電力を消費し、多くの廃熱を発生させます。そのため、環境に対して顕著な影響を及ぼします。データセンターは必要不可欠な存在ですが、自然との関係は複雑で、様々な側面から考える必要があります。

完全に水力発電で稼働し、廃熱がレンフォルシン・ランタ・ビジネスパーク内の建物の暖房に利用されている大型スーパーコンピューター施設(LUMI)。(提供:Mikael Kanerva, CSC – IT Centre for Science Ltd.)
完全に水力発電で稼働し、廃熱がレンフォルシン・ランタ・ビジネスパーク内の建物の暖房に利用されている大型スーパーコンピューター施設(LUMI)。(提供:Mikael Kanerva, CSC – IT Centre for Science Ltd.)

データセンターと気候変動

データセンター内は、気候が制御されていて、主要なシステムは多数のバックアップ方法を備えており、内部環境は非常に頑丈に設計されています。しかしながら、電力や海底通信ケーブルネットワークへの接続といった外部要因は、最大の弱点にもなります。これらのいずれかとの接続が断たれた場合、データセンターは事実上、機能を果たせなくなります。

猛暑や暖冬がデータセンターに影響を与える可能性は短期的には低いものの、災害や異常気象はすでに世界各地のデータセンターに悪影響を及ぼしています。例えば、2011年の東日本大震災では、日本と北米を結ぶ海底通信ケーブルが損傷しました。また、2017年にアメリカ・カリフォルニア州で発生した山火事では、データセンターが焼失寸前になる事態が起こりました。

石狩再エネデータセンター第1号の外観イメージ図。(提供:東急不動産)
石狩再エネデータセンター第1号の外観イメージ図。(提供:東急不動産)

データセンターはこれまで、設置地域の電力網から電力を得るのが一般的でした。このため、電力が安い地域や、電力補助金がある地域にデータセンターが設立されてきました。しかし、最近ではデータセンターが近隣の再生可能エネルギー事業者から電力を購入したり、主に太陽光発電による自家発電設備を敷地内に建設したりする動きが進んでいます。

データセンターの再生可能エネルギー利用ついては、透明性が不十分です。再生可能エネルギーが豊富で安価な場所では、市場原理によってデータセンターが再生可能エネルギーに移行する傾向があります。しかし、市場原理に頼るだけでは不十分で、多くの自治体や政府が、データセンターが再生可能エネルギーを利用することを確実にするための法律を制定しています。

長期的には、研究者と企業が密にコラボレーションし、エネルギー効率や排熱の再利用、長期的な環境影響に関する最新の知見を順次導入するような、データセンターのエコシステムがここ北海道にできることを夢見ています。

ユハ・サウナワーラ 北海道大学 北極域研究センター 准教授
ユハ・サウナワーラ 北海道大学 北極域研究センター 准教授

データセンターに影響を与えた電報と電話

海底通信ケーブルネットワークは、1800年代半ばに電報のネットワークとして始まりました。1900年代までに、このネットワークは南極大陸を除く世界中のすべての大陸を接続するまでに拡大しました。

1901年のイースタン・テレグラフ・カンパニーのネットワーク。太平洋を横切る点線は、1902年から1903年に敷設が計画されたケーブルを示す。(A.B.C. Telegraphic Code 5th Edition, via Atlantic-cable, Public Domain, [出典元](https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5916525))
1901年のイースタン・テレグラフ・カンパニーのネットワーク。太平洋を横切る点線は、1902年から1903年に敷設が計画されたケーブルを示す。(A.B.C. Telegraphic Code 5th Edition, via Atlantic-cable, Public Domain, [出典元](https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5916525))

時代が進むにつれて、電報に変わり電話が、さらに電話はインターネットに置き換えられました。銅線や金線の代わりに光ファイバーケーブルが敷設されました。しかし、海底ケーブルネットワークのルートは、元の電報の海底ルートとほぼ同じままで、分岐が増え、より多くの上陸地点へと接続されています。  

このように、1世紀以上前の敷設が、多くのデータセンターの立地に影響を与えています。

文:Sohail Keegan Pinto

翻訳:齋藤有香

2025年8月4日公開

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